サニーと小松の映画の趣味は合わない。
 世間一般で言うところのお付き合いというものを始めた二人だったが、その付き合い始めて見えてきた相違点のひとつが、映画の趣味というものだった。
 サニーは、映像や表現の美しさを求める。
 そういうのは得てして、無音声だったり、難解だったりするので小松は見ていても、ちんぷんかんぷんだった。わかりやすく言えば、一緒に見ていてもあまりおもしろくなかったのだ。
 小松は、見ていてストーリーのわかりやすいものが好きだった。特に勧善懲悪な格闘ものなんて、見ていてきちんと悪役が吹っ飛ばされていくのだから、すっきりとするのだし。だがサニーはそれを美しくないという。悪者を倒すついでに世界を救い、恋人まで手に入れるなどチープでナンセンスなのも大概だと。
 よって、二人でたまの休日をハントではなく小松の自宅で過ごし、食後のまったりとした雰囲気でテレビをつけていた時に流れてきた映画をぼんやりと眺めることになる。 地上波で何度も流されているその映画は、いわゆる恋愛ものだ。
 二人のどちらの趣味にもない。
 映画館に行ってまで見ようと思えず、惰性でつけているだけのテレビから流れてこなければ、たぶん一生、見る機会はなかっただろう。
 そもそも最近のというか、恋愛ものはそれこそワンパターンなものだ。
 別れようとしたり、誤解からすれ違ったり、妨害を受けたり、死にかけたり。なんていうか、泣かせどころが露骨すぎるのだ。
 今流れている映画も目新しいものはない。
 だからこそ、幾度となく再放送される所以になっているのかもしれないが。
 ソファに座り、膝を抱えた体勢で小松はぼんやりとそれを眺めていた。チャンネルを変えなかったのは、単に、面倒だったからということもある。
 その横でソファの面積の半分以上を取ったサニーが気だるそうにコーヒーを啜っている。
 画面の中では、主人公である男女二人が互いに告白をしようとしているシーンだった。

 男が、女の細い指に触れる。
 その手を取って、ゆっくりと顔を上げた。

「君が、「すきだ」」

 台詞が重なった。
 隣から聞こえてきた声に小松は驚いて目を丸くし、横にいるであろうサニーを見る。
 サニーは、小松を見つめていた。
 ことり、とコーヒーの入ったマグカップを机の上に置く。

「「すきだよ」」

 さらにステレオで、声が重なった。
 目を丸くしていた小松だったが、やがておかしそうに双眸を崩す。

「なにやってるんですか、サニーさん」
「オレが言うほうが似合ってただろ?」

 笑う小松にサニーが、にやりと笑んで見せた。

「すきだ」
「はいはい」
「すきだ」
「はい、知ってます」

 繰り返し告げながら、サニーが横にいる小松を抱き上げ、腕の中に閉じこめる。
 くすくすと肩を小さく揺らして笑う小松につられるようにして、サニーもプッと吹き出した。

 恋愛映画は趣味ではない。
 そのわけは、いま、ここにある。






「すきだよ。」
title:『愛しいきみと』 直青