それから長い長い時が過ぎました。
それはあるときから誰も城に近づけないようにしてしまったがために、城が荒れ、朽ち果てるようになってしまうほどに長い時が過ぎたあとのこと。
美しい獣のおはなしは、それでもまだ続いています。
朽ちた城に住まう獣は、もはやこの世のものとは思えないほどの美しさを放つようになっていました。
一目見れば、誰もが心奪われて溜息をつくほどの美しさ。
けれど獣は誰とも関わろうともしません。
何も語らず、何も聞かず。
その腕のなかに今にも壊れてしまいそうな髑髏を宝物のように抱えて、朽ちた窓辺に座るだけです。
獣が何を考えているのかは、もう誰にもわかりません。
時折、愛おしそうに髑髏を指先で撫でて、ほろほろと悲しそうに涙を流す以外、獣の心の動きを知る術はありません。
その髑髏が誰のものなのか、知るものは誰もいません。
実は獣自身でさえ、自分の抱えている髑髏が誰のものなのか、もう覚えていないのです。
昔々のお話。
美しい獣のお話。
これにて、おしまい。
The Beast.-10-