・擬人化状態紹介とか。
(基本は相棒との外見的特徴をそのまま交換している感じです。色合いとか、外見年齢が違うのともありますが)
>テリー
外見はトリコを十五歳くらいにした感じ。伸び盛りの青少年。白銀を思わせる白髪に、黒い瞳。頬の痣などがある。基本的な口調もトリコとほぼ一緒。
>キッス
外見はココを十七歳くらいにした感じ。柔和な物腰や外見的な特徴(黒髪とか)はあまり変化はないが、基本的に相手を呼びつけにしたりしている。
>クイン
外見はサニーを子どもにした感じ。薄い紫色の長い髪が特徴で、中性的。舌っ足らずな口調で(難しい言葉=漢字がうまく使えない)、素直だが照れ屋。
……こんな感じです!
上記三匹はIGOで作ったグルメ食材を口にした影響で擬人化しています。小松は人の姿としては不慣れな彼らの世話をするために呼び出されていますよ、というのが前提条件。
□
大きな……本当に比喩表現などではなく、これはどこかの王宮か何かで使っているような巨大で長いテーブルの上に、次々と多種多様な料理の数々が所狭しと並べられていく。
いつも見ていて知っていたはずなのだが、改めて見ても驚きのほうはひとしおのようで、関心するやら感嘆のため息をもらすやらと反応をそれぞれ返しているテリーたちの様子に、キッチンから出たり入ったりを繰り返していた小松も嬉しそうに笑みをこぼした。
「もう食べててもいいんですよー?」
ただ、いつまでたっても並べられていく料理に目を見張るばかりで手をつけようとしない彼らに向けて小松はそう声をかけた。
お腹が空いていないわけがない。
そもそも小松は彼らの食事事情を解決するためにここに呼び出されたのだから尚更だ。
「いいのか!」
……どうやら小松の『よし』を律儀にも待っていたらしい。テリーがガバッと勢い良く顔を上げて小松のほうを見やる。ちなみにその口元に僅かに涎が垂れていたのは、絶対に飼い主というか、パートナーに似たせいなのかなぁ、と小松はちょっとだけ胸の内で笑いを誘われて言葉をこぼした。
「テリー。テリー、涎出てるよ」
「ん?」
「…………品がない」
涎が出てることを指摘されてもテリーは首を傾げるばかりで拭おうともしない。多分、拭う必要性を思いつかないのだろう。そこは元々バトルウルフなのだから仕方ない、とも言えるのかもしれないが。
対して隣でそれを見ていたキッスは胡乱気な目をテリーに向けてため息をついてみせる。
あ、ココさんと反応がそっくり、と小松はまたしても胸の内で呟く。
とりあえずこれ以上は埒が開かないので、小松は持っていたナプキンでテリーの口元に垂れていた涎を拭ってやった。何の言葉がけもしない突然のことだったのだがテリーは小松がすることだからとでも思っているのか、口元に来た手の動きにもなすがままだ。
一通り拭い終わって小松が手を離すと、テリーが彼を見上げてニカッと笑みを見せる。
「サンキュー、小松」
「お礼を言うくらいなら最初から…………ん、でもいっか」
説明するだけ無駄なような予感がしてツッコミごと放棄したあと、小松はいい加減に食事を開始するためにスッと両手を胸の前で合わせる。
……ちなみに先ほどから反応のないクインは、目の前に積まれた卵料理の数々にすっかり目を奪われて無言のまま凝視し続けていた。表情の乏しい顔なのは変わらずだが、キラキラと期待に輝く瞳は、実は結構な庇護欲をみるものに与える。小松はそれをこっそりと見ていたので、先に挨拶をすませてしまうことにしたのだ。
「いただきます」
「「「いただきますっ!」」」
手を合わせた小松の仕草に習ってテリーたちも真似をしたあと、合わせて挨拶をする。
するとそれがやはり合図となって、まずテリーが肉料理に手を出した。骨付き肉の骨の部分を手に取り、そのまますごい勢いでかぶりつきと咀嚼、嚥下とを繰り返す。
キッスはサラダの入ったボウルを手にとってそこからひょいひょいとフォークを使って食べ進めていく。テリーの反応云々についてこっそりと毒を口にしていたが、ボウルから直接取るという一種の不作法をしているところを見ると、お腹はかなり空いていたようだ。
(よかった、二人とも食べてくれて)
ひとまず食事を問題なく進めることができているテリーとキッスを見て、小松は人知れずホッと胸をなで下ろした。
人間の姿になったとは言え、食事云々については未知数の部分が大きい。一応、トリコたちの好物と普段の彼らが好んで口にしているものを考慮して料理を作ったのだが、それは間違いではなかったようだ。
(あ、そういえばクインは……)
そこで先の二人の陰に隠れるような形になってしまったクインのことを思い出して小松はひょい、と体を傾けてみる。
見ればキッスの隣、彼の体に隠れるような形でクインはフォークを片手に難しい顔をしていた。
先ほどから食べるペースが変わらないテリーとキッスと違い、クインの食の進みは遅い、とうより小松が見ている間には少しもフォークが進んでいない。
「…………クイン?」
それを見つけて小松はととと、とクインの側へと近寄りながら声をかける。
するとクインは体を少しだけ竦ませてばつが悪そうな顔をして表情を曇らせながら振り返った。
「……こまつ」
「どうしたの? もしかして食べられないものでもあった?」
一応、クインの好物(後はサニーが普段食べているものも考慮に入れて……美容云々はともかくとして)は入れてあるのだが、口に合わなかったのかと言外に訊ねてみれば、ふるふると首が横に振られた。
じゃあどうして、と小松が言うよりも早く、スッとクインが手にしているフォークを前に出す。
「……これ、うまく、ささらなくって……」
「あ……あぁ」
ボソボソと口ごもりながらもクインから理由を明かされて小松が納得して頷きながら声をあげる。
そうなのだ。
クインは一応フォークを持っているが、握り方がこう……独特の持ち方、をしていた。見た感じから伝えれば、柄をそのまま握り込んだような形、とでも言えばいいのか。
クインはどうやら道具の使い方、というか手を使うもの、というのが苦手らしい。
テリーやキッスはほとんど問題なく(前者は今、まさにチャーハンをかき込むためにレンゲを持っている)使っているのですっかり失念していたのだが、元々がグルメ動物である彼らが、人と同じ動作をする、というほうが珍しいのだろう。
外見は人間そのもので、しかもトリコたちとなまじ似通ったところが大きすぎるために失念していたのだ。
「そっか、ごめんね、気づかなくて」
「ううん……コマツは、わるくない……それに、テリーとかキッスはちゃんとつかえてるし……」
クインはそう言うのだがしゅん、とうなだれている様子はどこか悲しそうだ。
まるでそれが怒られた子どもを見ているようで小松もつられて眉を下げてしまう。
クインは元々テリーたちと比べても外見的な年齢からして小さい。
彼らと比べてできないことがあっても仕方のないことだ。
(それに、クインは元々マザースネイクだから手もなかったしね)
手どころか足もないのだ。
初めて付くしの経験で、できないことが多いのが当たり前とも言えよう。
調理の最中に『はじめてのハグ』をねだったときの様子を思い出したところで、フッと小松は表情を緩める。
「クイン」
「……?」
呼びかけられ、そろそろと顔を上げたクインの眼前に小松はフォークですくい上げたオムレツを差し出した。
とろとろの半熟の黄色とチキンライスがフォークに乗せられているのを見て、クインが大きく目を見開く。
「…………」
「これ、結構自信作なんだ。クイン、一口食べてみてくれない?」
小松の言葉にクインは緩やかに瞬きを繰り返す。
それから小松とスプーンの上をしばらく見比べてから、あーん、と小さく口を開ける。
小松がその口のなかにスプーンを差し入れてやれば、はく、とクインが口を閉じた。小松がスプーンを取り出したところで、もぐもぐとクインが咀嚼を始める。
しばらく口の中に広がる味を確かめていた様子のクインが、ごくん、と嚥下をしたところで目を開けてから、ゆっっくりと言葉を落とした。
「……ぉいしい……!」
「そう、よかったー!」
言葉と同時にキラキラと輝く瞳、そして僅かに頬を紅潮させたクインに小松も満面の笑顔をのぞかせる。
「たまごふるふるしてて、すごく、おいしい!」
「でしょう? その半熟が難しいんだよ」
興奮気味のクインに小松はニコニコと笑いながら再びオムライスをスプーンで掬いとって口元に運ぶ。するとクインも待ちかねたように自分から、はくん! と音が鳴りそうな勢いで小松から手ずからに貰うオムライスを堪能し始めた。
二人がしていることはいわゆる『あーん』なのだが、小松は普段からユンの世話やらなにやらでしていることなので羞恥心はない。むしろ純粋な瞳を向けられて無言で『もっと』と催促されれば断る通りもなかった。
さらにクインも美味しさに心を奪われて自分が食器をうまく使えないこと云々のことを意識の外に追い出して、ただひたすらに小松からの『あーん』を待つことになる。
ただし。
いつものことというかお約束なのだが。
テリーとキッスはそんな彼らのやりとりをずっと見守っていた。最初こそクインのことを思って傍観の姿勢を貫いていたのだが、やはりというべきか、先にテリーが我慢できなくなり、『オレもオレも! 小松、オレもあーんってしてくれー!』と言いだし、食堂はしばらく結構な騒ぎになり、キッスは自分はどうすべきなのかと騒ぎを後目に頭を悩ませるのだが。
それはまた、別の話だ。
オレとボクとウチと、あのこ。−あーん。−