サニーから見れば、調理中の小松ほど『美しく調和した姿』はないと思っている。
 並べられた食材の鮮やかさ。
 バランスを考えて決められたメニュー(……美容に気を遣えと言っているからか、その傾向も少しずつ出てきた。良い兆候だ)。
 無駄のない手際の良さ。
 そして何より、迷いのない手つきによって振るわれる調理道具など、目を奪われるほどだ。

「……♪」

 作っている当人は身についた所作から生み出される良い意味での余裕からか、実に楽しそうだった。
 もっとも、料理をしているときの小松は、いつも楽しそうなのだ。
 鬼気迫るときだってある。
 真剣に、こちらが思わず一歩引かなければと思わせるほどの集中力を持っているときも、ないわけではない。
 どちらも楽しくないわけではない。
 料理というものに対する小松の姿勢は、いつだって真っ直ぐなのだ。

「あとは、トーストが焼けたら林檎を乗せて蜜で絡めてー……」

 今のところ小松は鼻歌まじりにキッチンの中を動き回っている。
 朝食のメニューは、林檎のステーキトースト(蜂蜜とジンジャーたっぷり)。
 たっぷりのサラダに、それぞれの好みでかけられるように、各種ドレッシングやハーブソルトまで揃えられている。
 半熟の卵焼きに、ソーセージ。
 チーズを並べて、あとはデザートにとヨーグルトもある。乾燥カットフルーツをヨーグルトに和えられるようにと、細かくカットまでしてあった。
 それらはみんな、サニーのためにと小松が作っているものだ。

「えっと、飲み物はどうしようかな」

 粗方準備は終えたのだろう。
 キッチンのなかで目まぐるしく動いていた小松が、ふと、立ち止まって思案する。

 …………その体を、サニーは何の前触れもなく抱きしめた。

「うわっぷ」

 案の定というか、近づかれていたことにも気付いていなかったらしい小松は、短く声を上げて硬直してしまう。
 けれど今この場にいるのが自分とサニーだけであることを思い出したのか、すぐに体の力を抜いて、自身を抱き込んでいるサニーへと顔を上げてみる。

「サニーさん」
「んー……」
「まだ朝ご飯作ってるんですけど……」
「ん」

 だから離してください、という小松の暗に含んだ言葉は、気付いているであろうサニーに見事なまでにスルーされてしまった。

「……ごはん、食べないんですか?」
「食べる」
「じゃあ、」
「ん……」
「…………」

 それでもやはり離してくれなくて、何かあったのかなぁ、と思いつつも小松はしばらくの間、サニーの好きにさせることにして自分の体を彼の腕に預ける。
 ぽふん、と背中に感じるサニーの胸に頭を預ける。
 サニーはまだ、動かない。

 一応、準備は整って、あとは並べて飲み物を注ぐだけだからと、小松も大人しくされるがままになった。





 ……実は、自分をまったく見ずに料理をしている小松を見ていたら、料理にまで嫉妬してしまいそうだったとは口が裂けても言えないサニーだった。
 (いくらそれが、自分のためであろうとも)






極端に心が狭くなるときだって、あります。