ユーユユー、ユーン!
呑気な。
本当に、聞いている方の気が削がれるほどの呑気な鳴き声が鼓膜を揺らしている。
何とも気の抜ける、その声の主は今まさにぽふん、と目の前に巨大な御柱のごとく聳え立っていた足に突進してきた。おそらく、やっている方はじゃれているつもりなのだろうが……
なのだろうが、その相手がいささかというより、かなり問題があった。
「……すみません」
「…………」
「うぅ、ボクを見ないでくださいよ……ボクがやらせてるわけじゃないんですから……」
呑気な声の主。
ぶっちゃけて言えば、楽しそうな子ペンギンとは裏腹に、飼い主ともうひとり、抱きつかれている主は何とも重苦しい空気を纏わせて向かい合っている。
半ば涙目の飼い主……小松は、小さな背丈をさらに縮ませて、申し訳なさそうに謝罪を繰り返していた。
「やらせてたらそれはそれでチョーシに乗ってるわけだがなぁ?」
「だから! ボクの意思じゃないんですってば!!」
何度も同じこと言わせないでください、と小松は眉をハの字にして主張する。
子ペンギンは、頭上で交わされている会話に気付いていないのか、キャッキャッと歓声に似た鳴き声まで上げ始める始末だ。
もう少し空気を読んでほしいものである。それを小松が言うには、異論を唱える面々もいるのかもしれないのだけど。
(飼い主に似たんだろ、といういらぬ茶々を入れる面子は、今ここにいないわけなのだし)
そして、
「…………ちっ」
子ペンギンに今まさに抱きつかれている当人、つまり、ゼブラは短く舌打ちをしたあと、何を思ったのかその丸太のような足を上下に動かし始めた。
勿論、抱きついている子ペンギンごとである。
「ああぁぁぁぁ、ゼブラさん、何してんですか! あぶ、危ないですってば!!」
途端、おろおろとして静止を呼びかける小松であったが、上下に揺さぶられることになった子ペンギンは、そんな彼とは裏腹に、かなり楽しそうな甲高い鳴き声を上げていた。
上下運動が面白いのかもしれない。
もし言葉が喋れるのであれば、もっとして! と、言っているような様子でもある。
「……喜んでるな」
「そ、それはそうかもしれませんけど!」
ユーン!
「……もうっ!」
「お前もするか?」
「結構です!」
小さい子って、たかいたかいとかの上下運動で結構はしゃぐよね? というお話。