誕生日プレゼントは、小さな箱に入れられたお菓子だった。
グルメケースに入れられたそれを一目、目にしたとき、ほんの少しだけ落胆したのはココだけの秘密だ。
(トリコは巨大ケーキなどを贈られていることを知っていたし、
サニーに至っては美容に良いフルコースを作らせた(もらったとは言い難いのだろう)と自慢していたのを聞いていたので)
片手の掌の上に少しだけはみ出しはするものの、持ててしまうサイズのそれは、軽くもあった。
ただ、ケースの蓋を開け、ひとつひとつ丁寧に包装されたそれを捲って中を改めて見て、一口、口に含んだときの味にココは先ほどまでの自分の感情を一気に覆されたのだ。
中に入れられていたのは、飴細工の菓子だった。
飴と、砂糖をベースにして少量の香料や果汁が入れられていてひとつとして同じ味がない。
食感はサクサクとしたウエハースに似ているが、口のなかに入れた瞬間から解けて甘味を残して消えていく様子は綿菓子のようでもあった。
「……おいし」
口に入れて味を噛みしめようにも、舌の上で溶けていくそれをいつまでも残していくことは出来ない。
今食べているのは、苺の果汁と細かく砕いた果実を使っているものだった。
果汁というのは、飴として使うには非常に相性の悪い代物でもある。
果汁に入っている水分が邪魔をして、菓子として完成するには難しいという要因があるからだ。
だが、今食べているそれは見事にそれをクリアして、果汁本来の甘さを醸し出している。
「どんな方法でこれを作ったのか、」
色々とその手法は予想できるが、そのあたりは本人に聞いたほうがいいだろう、と思ったところで、ココはひとり溜息をついた。
この菓子を誕生日プレゼントに、とココに(既知の友人越しではあるが)渡してくれた本人…つまり、小松とはもう一ヶ月近く顔を見ていないからだ。
最後に顔を合わせたのは、あの日。
そう、ココがプロポーズに出かけた、その日以来になる。
忙しいのはわかる。
実際、かつて休み過ぎなんじゃないかと苦言を口にしたのは自分だということもココは重々承知している。
「…でも、一応答えを聞いておきたいんだけどな」
その最後に顔を合わせたあの日、プロポーズ(を、したとココは思っている。何度も繰り返しているが)をしたあと答えの一切を聞かずにココは小松と別れた。
いつ聞かせて欲しいとも言っていない。
明言していないのだから、小松がいつ答えを返してくれるかもわからないのが現状だった。
……まあ、
当の小松はと言えば、同時期に人から言われて始めてココの花束の意味に気づき、今まさに大混乱の真っ直中にいたりするのだが、
それはまだ、ココが知らない話だ。
だからこそ今、黙してここに座っているだけで。
溶けて消えてしまった飴菓子の後味を舌の上で転がしながら、ココは次のものを手に取る。
少しずつ惜しむようにしてケースのなかに入っていた色とりどりのそれも、もう残り少ない。
「これを食べ終えるくらいには、来てくれない、か…」
ふぅ、と息を吐いてみると、甘い苺の香りがした。
カランコエ