………オレの好きなこは、結構モテる。
ていうか、かなりモテる。
顔は十人並みというか、お世辞にも見目が良いとは言えない。
たくさんの人の中に埋まってしまう。初見は、どうしたってそうなるだろう。
感情の浮き沈みが激しいというか、良く泣くし、良く笑う。んでもってツッコミも激しいし、たまにとんでもないボケをかましたりもする。
一緒にいるとうるさいし、やかましい。
いきなり大声を出してこちらの鼓膜をぶち破ってくれるんじゃないかというときだって、ある。
でも、モテる。
異様に、というか、ある一定のラインを越えてくると、あのこは途端にその印象を塗り替えてしまう。
底抜けじゃないかという度量の広さ。
真っ直ぐに折れない意思の強さ。
懐にあるものに対しての優しさ。
他にも、色々と。
とにもかくにも、そんな、外見の云々なんて全部取っ払ってしまう内面の輝きを持っている。
そしてそれを見せられたら、大抵、ダメなんだ。
外見ではなく、内面に惹かれたということは、あのこに近い位置にいるということになる。
あのこは、自分に近しいものにとても優しい。
その上で自分を飾ろうとしない素朴さ、その素直な魅力は、側にいるものを容易に引き入れてしまう。
そして、そんな風に距離を詰めてしまえば、相手もまたあのこの魅力に気づいてしまう。そこまで踏み込めば、あとはもう、なし崩しというか。
友情だってある。
深い信頼関係もある。
未来に期待する、そんなものだってある。
けれど、やはりというか、あのこに心から惹かれる者は結構いたりするのが、また。
「しかもそれが、揃いも揃って規格外なあたりが……なんというか、大物あたりだよねー…」
「はい?」
徒然とそんなことを考えていると、目の前にいた件のあのこ……小松が、くるりとこちらに振り返った。
身長差があるから、その上で顔を上げて、大きな目をより大きく丸くして、パチパチと瞬きをしながら不思議そうに首を傾げて見上げてくる。
「どうかしたんですか、鉄平さん?」
「んー……」
さて。
なんと言ったらいいものか。
まさかキミのことを好きな連中がいることを思い出していたとかなんて、言えるわけがない。
それに、そんなことを言ったってこのこはきっと、不思議そうに目を丸くしたあと、笑いながら「そうなんですかー…」なんて嬉しそうにするだけなのだ。
…ちなみに、この鈍感さがよりまわりの状況をややこしくしていることに、気づいているんだろうか?
(気づいていたら、もうちょっとどうにかなりそうなものだけど)
「………んー……」
どう言えばいいものかと思案を巡らせていると、少しだけ不服そうに唇を尖らせながら小松が前を向く。
「どうせまた、『口は禍のもとだから』とか言うんでしょ」
……そのつもりはないのに。半分くらいは。
けれどそう思ってくれたほうがこちらとしては楽だから、肯定も否定もせずに、曖昧な笑みを浮かべてみせる。
視線を向けなくても、声だけでそれが伝わったのか前を向いたまま、小松が「……もうっ」と不満さを欠くそうともせずに、頬を膨らませて歩みを早くしていく。
その後ろ姿を眺めながら、気づかれない程度にそっと息を吐いた。
もし、あのこがもうちょっと人の想いに聡かったら、こんなふうに一緒にはいられないだろう。
オレの好きなこは、結構モテる。
勿論、オレも好きだから、そのなかの一人になるわけだ。
知られたら一緒にはいられない。
思いのベクトルが違う方向を向いていることを知られたら、こんなふうには、いられない。
(……その鈍さで、オレもこうやって側にいられるわけだけど、ね)
胸のうちの思いは言葉に出さず、でも、いつまでも機嫌を悪くするわけにもいかないから、とりあえずその背中を追いかけるために足を進めていった。
言葉にしないとね?