午後のひととき。
 美味しい昼食後。
 うららかな陽差し。

「……………」

 ここまで揃えば、眠たくなるのが人のサガというものだ。

 リビングの一角にトリコと背中合わせになって腰を下ろし、何をするわけでもなく気怠げな時間を過ごしていたのだが秋の過ごしやすさと相俟って、こっくりこっくりと小松は頭を揺らして船を漕ぎ始めていた。
 体が傾くたびに、ハッとして元の体勢に戻るのだがしばらくすれば睡魔に襲われる。
 しかも回数を重ねるたびにその間隔は狭くなり、目を閉じてしまう時間も増えていく。

「……小松?」

 背後で睡魔と戦う小松の気配を察してか、手元で何やら小道具を作っていた(ハント用のものと思われる。思われる、というのも、小松からは見ることができないから)トリコが振り返りながら背中にいる彼の名を呼ぶ。
 すると小松は、「…はぃ」と返事をした。律儀にも。
 だが気の抜けたその声からは普段のやかましさはなく、放っておけば今にも意識を失ってしまいそうだというのが傍目からでもわかるほどだった。

「眠いか?」

 そんな小松の様子に、トリコは苦笑いをこぼし短く問いかける。
 これにも小松は返事をした。
 した、というのは思しきという意味で、その言葉の意味はトリコの耳を持ってしても聞き取ることが出来ないような意味不明のものだったのだが。
 トリコの背中にもたれ掛かったまま、小松はぼんやりと宙を見つめる。その視線に、意識の色は既にない。

「あー、別にいいぞ。寝ちまっても」

 聞こえているかどうかは甚だ怪しいものであったが、とりあえずトリコはそう小松に告げた。
 食欲が満たされれば眠くなるのは、よくあることだ。
 しかも小松の場合は、昼食をトリコの分まで作ったので疲労も大きい。
 
 小松からの返事はなかった。
 だが、トリコの言葉を聞いてかどうかはわからないが、途端にスゥ、っと息を吐くようにして小松が意識を手放したのが背中ごしにトリコに伝わってくる。
 体全体で寄りかかったせいで、ほんの少しだけ重みを増した背後の体を感じ、トリコがおかしそうに破顔した。

「別にオレの了承なんかいらねぇだろ」

 律儀なヤツだな、と言ってトリコは笑う。
 ククッと笑い声がもれ出てしまいそうになるが、体を振動させることを考えてかその声を堪える。
 ただ、おかしそうに緩む口の端だけは止めようがなかった。

 手元で弄っていた道具を置いて、トリコは背後を振り返る。
 身長差もあってか小松の全身を見ることは出来なかったが、投げ出されている手や足を目の端にとらえることは出来た。

「…あとでテリーにタオルケットでも持ってきてもらうか」

 ぽつりと呟いてトリコが視線を元に戻す。




 あとはただ、小さな寝息だけが部屋の空気を揺らすだけだった。






「自分では動かないんですね」
「動くと小松が起きちゃうから、だそうです」
「…甘いなぁ」
「甘いですねぇ」