「……DVだ」
「でぃ、DVなんかじゃありませんっ!」
鉄平の一言に小松が勢い良く首を横に振って否定する。
ちなみに、
Q.DVとはなんぞや?
A.DV(ディーブイ)は1994年HDデジタルVCR協議会より家庭用として発表されたデジタルビデオの規格のひとつ。 開発当初はハイビジョン映像をベースバンドで記録するHD規格のVTRで……
(ボケはこのくらいでおいといて)
改めて、
A.「ドメスティック・バイオレンス」または「DV」(domestic
violence)とは、同居関係にある配偶者や内縁関係や両親・子・兄弟・親戚などの家族から受ける家庭内暴力のことである。
「顔面を叩くことが、DVじゃないの?」
「うぐぅっ!」
鉄平の訥々とした言葉に、横を向いて視線を合わせないようにしていた小松が苦鳴の声を漏らす。
気まずそうに顔を歪めている小松に対して、鉄平のほうは表情が乏しかった……顔面が、赤く腫れている以外では。
ちなみに部屋には鉄平の他には小松しかいない(ユンユンは、昼寝のために別室)ので、彼の顔を叩いたのは当人以外にありえないわけである。
「叩かれる理由もないし」
「そ、それは、鉄平さんがいきなりキスしようとしてくるから!」
そこで小松が勢い良くバッと振り返る。
頬が赤く染まっているのは自分の言ったことで照れているせいもあるのだろう。
恨みがましそうに、うーうー、と唸っている。
「結婚してるならキスくらい当たり前でしょ」
さらり、と鉄平はそう言った。
だが小松は不服そうな表情を崩さない。若干怒りと、羞恥、そしてほんの少しの照れを混ぜたような顔でキッと鉄平を睨む。
「……あたりめ味のキスは嫌です…!!」
「…………えー」
「えー、じゃないですよ!」
だってスルメですよ、スルメ! と、興奮のあまりバンバンと床を叩きながら小松は抗議するものの、鉄平のほうは何となくわからない、と言いたげな表情を浮かべている。
「スルメ味というだけでキス拒否された…」
そちらのほうが問題であるようだった。
小松も、嫌だというだけで顔面を叩く(ちなみに、張り手。バッチーン! とかなりいい音でした)のはやりすぎた、と少し冷静になった頭で思い始めたようだった。
気まずそうに眉を寄せて呻いている。
「……と、とりあえず」
「うん?」
「…歯磨きしてきてください…」
「……歯磨き」
「…………」
オウム返しの確認に、小松がこくり、と言葉もなく頷く。
「……んー」
じゃ、そゆことで、と鉄平がのっそりと立ち上がった。
その後ろ姿を眺めてから、「なんでこんな恥ずかしいことになってるんだろう」と、小松は溜息をつきながらその場に頭を抱えて蹲ってしまったのだった。
キスの味はいかが?