明るい笑い声が聞こえてきた。
陽差しは良好。
春と夏の合間ともなるこの季節の陽差しは、実はジリジリとした暑さを肌で感じることもあるのだけど、今日は柔らかな風が吹いているせいもあってか、別段暑いとも感じることはなかった。
そんないかにも過ごしやすい陽気のなかで、その声はとてもよく似合っている。
顔を上げると、視線の先で案の定というか、予想通りの人物の姿があった。
ユンユンを連れて散歩に出かけた公園の芝生の上(鉄平は、飲み物を買ってくるために売店へと赴いた帰り道)で、件の一人と一匹が、子どものようにじゃれ合っている。
子どものよう、というか、言い方を変えると親子のように、とも取れるかもしれない。
人影もまばらな公園のなかで、その笑い声は本当によく響いた。
けれど、それはイヤな目立ち方ではなくて、「楽しそう」だと呟いてしまうような、そんな微笑ましさを見るものに連れてくるのだ。
グルメ動物としては、成長すれば二桁台を叩き出すようなウォールペンギンがいることについては、その光景があまりに自然すぎて、誰も不思議に思わないらしい。幸せオーラ、恐るべしだ。
気にしては負けというか、そんなことが気にならないくらいに、両者は本当に楽しそうなのだ。
ユンユンが甘えきった声で特徴的な甲高い声を上げて小松の胸に飛び込んでいる。
それを小松はこれまた全開の笑顔で受け入れているのだ。
勢い余って背中から倒されても、それが余計に楽しいのか小松も、ユンユンも心の底から楽しそうに笑っている。
無粋な言葉などで、それを邪魔することが出来るわけがない。
ただ、その光景を目にするだけで口に出す言葉などすべてが無意味になるくらいには。
腕に抱きしめたユンユンの頭を、小松が「こいつめぇ〜」なんて口だけの悪態をつきながらギュウギュウと抱きしめる。
その感触が心地よいのか、ユンユンも逃げもせずにさらに声を上げて答えている。
それは本当に、目を奪われるほどに幸せな光景で、
ゴキン
「あぃた」
……意識を奪われたまま、前方にあった伸びた枝に気づかずに顔を激突させるくらいには。
その音に気がついた小松がビックリした顔で振り返り、顔を硬直させてしまう。
「て、鉄平さん、大丈夫ですか!?」
あの笑顔が消えたのを残念だと、そんなことを思う。
それに気づかずに小松は体の上で抱いていたユンユンを横に置いて起き上がると、慌てた様子で鉄平の側まで走り寄ってきた。
小松と同じく、鉄平の惨状(と、まではいかないが)に気がついたユンユンも、てちてちと小さな足を一生懸命動かして近づいてくる。
ユンユン? と小首を傾げて見上げてくる無垢な瞳が、なんとなく胸に痛い。
「平気平気」
「平気って……なんかすごい音鳴ってましたけど」
あと、鉄平さんがぶつかった枝から大量の葉っぱが落ちてきてます、と小松は心配そうに眉を寄せてしまっている。
「オレはこれでも再生屋として結構やってんだよ? 小松くんも知ってるでしょ」
「それはまあ……」
鍛え方が普通と違うということを強調しての言い方だったが、小松の表情は晴れない。
それをもったいないことをしたなぁ、と思いながら鉄平はどうしたら先ほどのような光景を見せてくれるのかと、内心で思案していた。
手に持った缶ジュースが、ひんやりと冷たかった。
「目を奪われる、ある意味、基本的なパターンです」
「パターンを忘れないのも、よくある話ですよ」