「…………『何かして欲しいこと』ですか?」
「ああ」
「うん」
「そーだ」

 目の前に並んだ三人の人物たちを見上げながら、小松は不思議そうに首を傾げる。

「なんでもいいんだぜ? ハントに連れてけっていうんだったらお前の好きなところでいい」
「さすがに、今日一日で出来ること、っていう制限がつくから、そう遠くへはハントに連れていってあげられないけどね」
「他にも、なんか欲しいもんがあるなら遠慮なく言え」

 大抵のもんだったら持ってこれると笑う彼らの顔に嘘偽りは感じられない。
 先ほど小松に向けて言った、「何か自分たちにして欲しいこと、なんでもいいから言え」というのは冗談ではないのだろう。
 いきなり何を言い出しているのかと小松は悩むが、トリコたち三人に変わった様子は見られない。
 彼らの申し出が好意から来る類のものであることも雰囲気でなんとなくわかる。

 何より、彼らは笑っているのだ。
 嫌々でもなんでもなく、ただワクワクと楽しそうに笑っている。
 小松が何を言うのか待っている、そんな空気が感じられた。

「………えと」

 ここで冗談でしょう、と笑い飛ばすことはきっとできない。
 それは、彼らの想いに反することになるから。

「……………………何も、」
「ん?」
「なに?」
「?」
「何もしないでください」

 そこまでわかっているにも関わらず、小松から出た答えはその一言だった。
 一息に告げられたその言葉にトリコ以下、ココとサニーも目を丸くして硬直してしまっている。

「……な、なんでだよ!」

 しばらく何とも言えない沈黙がその場に流れていたが、先に戻ってきたのはトリコだった。
 慌てたような大きな声で質問されると、小松も困ったように笑うしかない。

「遠慮しなくてもいいんだよ?」
「別に遠慮なんてしてませんよ?」
「つまり……何もしないで、っていうのが、オレたちへの…?」

 心なしか震えているサニーだったが、不運にもそれは小松に気付かれることがなかった。

「はい。ボクからのお願いは、『なにもしないでください』です」

 傷ついた。
 というか、言葉の暴力がもしあるのだとしたらこれほどのダメージは他にないだろう。
 『何かして欲しいことはないか?』という自分の言葉に、相手から返ってきたその答えが「何もしないでください』だなんて。

 それでも萎れてその場で蹲ったりしなかったのは、もう意地と見栄だ。
 いくらなんでもこの場でKO(ノックアウト)よろしく崩れ落ちるのは、矜恃にも関わる。

(でも、でもな、小松…! いくらなんでもそりゃないだろ!)
(何もしないでくださいって言われるなんて………ボク、何か悪いことしたかな…)
(ありえねぇ…それって遠回しの拒絶じゃねーか!)

 ただ、三者三様に、かなりダメージを受けているようではあったが。
 表面上は何とか持ちこたえているものの、背後に漂う空気がブルーな感じになってしまった三人を後目に、小松は困ったような顔で苦笑いを浮かべて続けた。

「だって」

 照れて頬を染め、それでも嬉しさを隠しきれずに目を細める。

「皆さんがいてくれる。それだけで、十分すぎるくらいなんですから」



 自分の誕生日に、自分の大切な人たちがいてくれること。
 それだけで、もう。



「これ以上、何かお願い事なんてしたら、バチが当たっちゃいます」

 幸せそうに、小松はそれを深く噛みしめながら呟いた。
(直後。
 うなだれ状態から見事復活を果たした四天王(−1)にもみくちゃにされることを、彼はこのときまだ知るよしもない)






もっとねだっちゃえ!!

「あー、ちくしょう! そういうことならオレたちの好きなようにするぞ!」
「えぇ、ちょ!」
「うん。本人に希望を聞くなんていうベタなことせずに、さらっちゃえばよかったんだよね」
「ココさん! 笑顔、笑顔がものすごく怖いです!!」
「前は、落として、持ち上げて、ほんっとに誑しだよなっ!」
「たらし!?」