「おつかれさまでしたぁ〜……」
誰もいなくなったホールの電気を消し、戸締まりを確認してから小松は大きな溜息をついた。
ここ数日の戦場真っ直中だった極限の忙しさの中に身を置いていたせいもあって、体は開放感よりも、やっと終わったという疲労感でヨロヨロしている。
それでも明日からはちょっとしたお休みを貰っているので、足取りは軽い。
本当に人というものは、クリスマスといったイベントが大好きな生き物だ。
グルメ時代と呼ばれる今のこの瞬間でも、いやこの時だからこそ、食を楽しみ、時間を楽しんでいるのだろう。
時刻はもう丑三つ時もいい時間帯で。
街を彩るイルミネーションも、その輝きのほとんどを失ってしまっている。
こんな時間まで恋人たちの眼を楽しませる必要もないのだろうけど、高層用の巨大なガラス窓の向こうから見える景色は、まるで宵闇の星空のようだった。
そっと手を伸ばす。
ひんやりとしたガラスに触れ、息を吐いた。
「……届いてるといいな」
世間一般の季節ごとに行われる大イベントという時期に休みが取れないことを、この職業についてから覚悟を決めている。
嫌というわけでもない。
それに、こういうイベントだからこそ出来る料理に腕を奮えるという特権は、むしろ誇るべきものなのだから。
お互いいい大人なのだし、そこのところは一緒にいられないのもまたわかっている。
仕事は、仕事。
生き甲斐は、また別の次元の問題。
それでも……イベントを楽しむ余裕がなければ、人生なんて面白くはないでしょう?
「クリスマスは過ぎちゃいましたけど、皆さんにいいことがありますように」
街に降る人口の星の瞬きのような光に、小松はここにはいない大切な人たちのことを思い浮かべる。
一緒にいられないかわりに彼らに送ったのは、色とりどりの星屑。
……きらきらの、金平糖をたくさん。
この光景を見てそのことを思い出していた。
呟き、手を離すと小松は踵を返して歩き出す。
夜は深い。
光は空と、地上に降り、昇り、その輝きを分け合っている。
ホテルの従業員用の出口の扉を彼が開けるまで、あと少し。
その先にいた大切な、ここにいるわけがないと思っていた人たちの姿を見つけるまで、あと
星屑の降る夜に。