「……なぁ」
「はーい?」
「お前、それ、楽しいか?」
「楽しくなきゃしないと思うんですけど」
「そなのか?」
「そうですよ」
そんなやりとりを交わしながらも、小松は手を止めることはなかった。
その手には櫛が握られていて、先ほどから膝の上に頭を乗せているサニーの髪を飽くことなく梳いているのだ。
別に、しろ、とサニーが言ったわけではない。
うららかな昼下がりに、何をするわけでもなく微睡んでいた時に小松が、髪を梳かせて欲しいとサニーに申し出たのが切っ掛けだった。
見た目からしてかなりの量があり、手入れもそれなりに大変なのはサニー本人が一番よくわかっていることだ。だが、触覚さえ引っ込めておけば触られることに関しては特に問題もない。
(いや、まあ、触られたら気持ち良いというか。そんなことはおいといて)
ただ、身長差の関係と、あとはサニーのちょっとした我儘で、小松の膝を彼が独占状態にしていた。
小松も自分の膝の上に頭を置いて機嫌の良さそうなサニーに、溜息をついただけで特にどかそうともせずに好きにさせたまま髪を梳かし始めた。
その間、二人は会話らしい会話もしない。
時折、思いついたように言葉を交わす程度。
だが、それが嫌なものかと聞かれたら、きっと否定するはずだ。
「サニーさんの髪はいつ見ても綺麗ですね」
「美しだろ?」
知ってます、とそう悪戯めいて笑いながら小松は頷いて同意を示す。
梳いている手を止めることもなく、サニーも楽しげに笑みを返した。
「あとで松の髪も梳いてやる」
「ボクの髪をですか? やりがいがないんじゃ…」
「オレがやりたい」
「……もう」
つまんなくても知りませんからね、と言う声が、明るい。
了承を得られたことで満足したのか、ごろりと反転してサニーが小松の腹へと顔を埋める。
悲鳴のようなものが頭上から聞こえてきたが、一番てっとりばやく感謝というか、この浮ついた気分を伝えるにはこういう風に体で示したほうが伝わりやすいのだということを、サニーは知っていたから。
ありあまる幸せ。