限定もの、という言葉がある。
 それはたとえば一点物だとか、そういうものだけではなく、『季節限定』だとかそういうものにも当てはめられて使われている。
 よって、食べ物には定番のものとは別に、それに旬のアレンジを加えた期間限定ものが発売されることが多い。

「地域限定っていうのもありますけどね」

 そう言いながら、小松はパリパリと袋の口を開けているポテトチップスをひとつ摘んだ。
 ちなみに、今食べているのはその地域限定品だ。
 そこでしか売られていない、という意味合いも込められているのだが、最近はその地域だけではなく別の場所でも販売されることが多い。
 ……限定なのか? という声が聞こえてきそうだが、いつも入ってくるわけではないので、そこはご愛敬といったところだろう。

「その分、味に好みが出るうえに当たり外れも激しいみたいだけどな」
「それはそうですけど……
 トリコさんに、当たり外れなんて関係あるんですか?」

 食べられるものは何でも口にしそうなのに、と、とても失礼なことを小松は言った。
 普段の食事ぶりを魅せられていたら言いたくなる気持ちも、わかって欲しい。

 小松の言葉にトリコはやはり、お前失礼なヤツだな、と返した。
 表情は全然気にしていない素振りなので、本当に気にも止めていないのだろう。楽しげに歯を見せて笑っている。

「オレもうまいもんの区別くらいはしてる」
「…………へー」
「信じてないな。舌を肥えさせておかなきゃ、美食屋なんて言えないだろ?」

 それは確かに。
 トリコの言い分にようやく納得して小松は頷きながら側に置いてあるペットボトルに口をつけた。
 ちなみにそれは「冬限定 ぽかぽかゆずソーダ」だそうだ。

「…あ。これおいしい」
「じゃあオレにも一口…」
「トリコさんのはそっち! 一口って言って、トリコさんのそれは規格外なんですから!!」

 飲み物に手を出そうとしたトリコの手がそれを掴むよりも速く、小松がそれを奪取する。
 いじわるなどではなく、本当に一口が今の500ミリペットボトル分くらいは軽くあるので小松の言い分は正当だろう。
 トリコは、ちぇーと口では言うものの、そのまま隣に置いてあった同じ種類のソーダに手を伸ばした。
 ……本当に、一口で全部を飲み干した(ペットボトルの底を手刀で切って)ので小松は苦笑いをこぼす。

「でも、こういう限定ものでハズレに当たると、作ってるところは定番にファンを増やしたいのかなーって思っちゃいますよ」
「ああー……不発のもんわざと作って原点回帰か? リスクが高いだろ」

 そうして昼下がりの居間で限定食品談義と、試食会をやっている二人を後目に、テリーは退屈そうに大きな欠伸をひとつ、かみころしたのだった。





たとえばこんな下がり。