家事は嫌いではない。
嫌いではない、というより必要にかられてやっているうちに苦に感じなくなった、と言うほうが正しいのかもしれない。
今も洗濯物を手慣れた様子で畳みながら、小松はぼんやりと意識をテレビのほうへと向ける。
テレビの中では昼下がりらしく、ドラマの再放送が惰性のように流されている。
ちなみに、今やっているのはミステリーものだ。
……初老に入りそうなインテリの、眼鏡の似合う刑事が相棒と一緒に事件を解決していくという、長らくシリーズをやっているうちの1話らしく、手慣れた構成の中にもはっきりとした厚みが感じられる内容だった。
確かに人気になるのも頷ける。
こうしてたまの休日、しかもチャンネルを変えたりもしない状況で映っていたから見ていたというだけの小松にも、そのおもしろさは伝わってくるのだから。
「………松」
意識をそちらにやっていた小松の耳に、不意に別の声が聞こえてくる。
振り返ると、思っていたよりもすぐ側にその声の主がいて、小松は少しだけ目を見張る。
「サニーさん」
「ん」
「びっくりしたぁ…」
「なんで?」
「だって、あっちのソファにいるものとばかり…」
「前が気付かなかっただけだろ?」
そうですけど、と言葉を濁しつつも小松はサニーを見る。
小松が洗濯物を片付けている傍らで、手伝う素振りも見せずにソファに陣取っていた(まあ、サニーに洗濯物を畳んで貰おうという気も小松に起きなかったから好きにさせていたのだが)サニーが眉を寄せた。
その仕草に、あれ? と小松は内心首を傾げる。
サニーが機嫌を悪くしているような、そんな気がしたからだ。
放っておいたのが悪かったのかと一瞬考えたが、それは違うはずだ。
そもそも、放っておいたのが嫌であるのであればサニーは自分からその距離を詰める。
会話らしいものはあまりしていない。
さて何があったのか。
「…サニーさん」
「んだよ」
「……えーっと、ボクの思い違いならすみません。先に謝っておきますね。
…何か、気に障ることでもありましたか?」
わからないときはさっさと本人に聞いてしまうに限る。
…拗れて、拗ねて、収拾がつかなくなったほうが事態が面倒なことになるのだから。
そう聞かれたほうのサニーは、しばらく表情もなく小松を見つめていたが、やがて小さく息を吐く。
「つに」
「別に、って…」
なんでもね、と言いながらサニーが、ぎゅぅっと小松を抱きしめる。
何でもないのなら今のこの状況は何なのかと小松は疑問に思うのだが、内心首を捻りながらも、肩口に押しつけられているサニーの頭を片手でゆっくりと撫でてみた。
(……テレビのなかにまで嫉妬とか、オレ、かっこわりぃ…!)
まあ、それも病の症状の一つです。薬も処置も出来ませんので、受け入れてくださいませ?