舌っ足らずな調子で紡がれる声。
つけっぱなしの有線放送から聞こえてくる気に入りだという歌手の歌声に合わせて、紡がれる音。
「……あれ、自分で口ずさんでるって気付いてないんだよなぁ」
「うん。この前、それは誰の歌? って聞いたら、赤面してたくらいだしね」
「自覚無しかよ」
その声を背景に、いつものメンバーが揃って居間で寛いでいた。
彼らの視線の先では、テキパキと動き回る小松の小さな姿がある。
口ずさまれているであろう音は、彼から聞こえてきた。
「…しかもどっちかっていうと女の歌手が気に入ってるみたいだしな」
「まあ、小松くんが流行の、それも男性シンガーを歌っているところもあんまり想像出来ないけどね」
失礼な話だが、確かに小松が男性シンガーの鼻歌を口ずさんでいるところ、というのが想像できない。
それらしいのを考えてもみるのだが、なんというかしっくりこないのだ。
「…でさ」
「うん?」
「さっきから気になってたんだけど、あれってあれだろ? 失恋ソング……」
「サニー」
「んだよ」
「細かいことを気にしてると、痛くもない場所を抉り取られることになるよ」
しかも自分のせいで、と忠告を受け、サニーは不服そうに唇を尖らせるがそれ以上の発言はなかった。
楽しそうにはしている。
上機嫌なのもわかる。
「……さっきから、別れるだの、離れていくだの…」
「出て行こうとかね。置いて行くとか、そういうフレーズばかり…」
「しかも結構明るい曲調で口にされるのって、結構、くるよなぁ…」
ただ、それで口ずさむのが失恋関連のもの、というのは如何なものかと感じるのだ。
特に聞かされるほうの身も、考えて欲しいのだが、あれが無意識である手前それを言い出せないというところもあって。
三人はそれぞれに溜息をついた。
それに気がついた小松が、首を傾げながら振り返る。
ちなみに、その女性歌手がほとんどアンハッピーな歌詞しか歌にしていないという事実を知るのは、もう少しあとのことになる。
ことばの魔力。