ティータイムには、いれたての紅茶と、スコーンにジャムとバター。
 一口大のプチケーキ。
 
 それから、ほんのちょっとした、言葉遊びを少々。

「なー、松ー」
「はーい?」

 紅茶をポッドから空気にくぐらせるようにしてカップに移しながら、生返事に小松が答える。
 カップはきちんと適正の温度に暖め、注がれる琥珀色の液体も、茶葉にあったお湯の温度に仕上げてある。

 準備は完璧だ。
 サニーが言うところで、美しい、と喩えることが出来るほどに。

「前な、どんな言葉で告白されたい?」

 この、彼の言葉さえなければ。
 言われた意味がわからず、思わず小松の体が凝固する。
 その間も傾けたままだったポッドから紅茶がカップに注がれていて、もう少しで溢れ出してしまいそうになる。

「あぶね」

 それはサニーの触覚によって辛くも防がれた。

「不注意だな」
「……あの…?」
「火傷したらどーすんだ」

 そう言いながら怠業そうに溜息をついて、小松の手から触覚を使ってポッドを奪うと彼の分のカップに注ぎ入れてやる。
 彼の触覚は大変便利な代物である。

 …いや、そうではなくて。

「ありがとうございます。で、サニーさん」
「なんだ?」
「ボクが聞きたいのはそれじゃなくて……さっきの」
「ああ、告白な」

 サニーは至って普通だった。
 これも何でもない会話の一端なのだろう。
 言葉遊びにも等しい、もの。自分相手にこんなことをして楽しいのかどうかは、小松にはわからなかったが。

「告白ですか」
「そう、告白」
「言葉っていうと、ボクが言って欲しい言葉になりますよね」
「オレはそう言ったつもりだけど?」
「そうです、ねぇ…」

 まあ、言葉遊びながら付き合うのも一興だろう。
 小松は考え込みながら、自分の席へと腰を落ち着かせた。

 紅茶に角砂糖をひとつ入れ、銀色のスプーンでかき混ぜる。
 混ぜ物がないせいか、琥珀色の液体はスプーンに舞わされるようにして円を描いている。

「……………………別に、なんでもいいです」
「ふぅん?」
「だって、どんな告白がされたいのかって聞かれてもボクには経験もないですし…その、相手の人がボクを思って言ってくれるのなら、その言葉が一番いいです」
「望みはないってか?」
「そうじゃなくて、言ってくれるのならその人の選ぶ言葉がいいってことですよ」

 かき混ぜ終わったティースプーンを横に置き、紅茶に口をつける。
 ふんわりとした甘さと、紅茶独特の渋みが口いっぱいに広がっていく。
 これならお茶請けに作ったスコーンがよく合うだろう。
 出来るなら、今度はチョコクリームも作っておこう。そんなことを小松は考える。

 その時、ふと視線に気付いて小松が顔を上げた。
 視線の主はサニーであり、彼はジィッと小松の顔を見つめている。

「どうかしたんですか?」

 何か言いたげなのに言葉がないことを不思議に思って小松は首を傾げた。

「……んー」

 しかしサニーからの返事は薄い。
 何やら考え込んでいるようで、何か自分の言ったことに不満でもあったのだろうか、と小松は思う。
 そんな変なことは言ったつもりはないのだけれど。

 ただ、サニーの手に持っている紅茶が早くしないと冷めてしまうのに、なんてことを考えていた。
 それを思うくらいの時間はあった。
 サニーからの返事がくるまで、もう少し、時間がかかったから。






遠回しの言葉は伝わりにくい。多分、九分九厘の確立で。