紙パックの口を開けて、注がれていくのはオレンジ色の液体。
『オレンジ100%果汁(濃縮還元)』という、消費者にもわかりやすいフレーズが全面に打ち出された、これまたオレンジ色を基調にした色彩に彩られている。
ガラスに注がれた液体をちょうど良い位置まで注いで、傾きを止める。
空いたパックの口を閉じて冷蔵庫の中に戻し、それをテーブルの上に置いていたおぼんの上に乗せる。
準備は、出来た。
振り返りながらリビングへと声を掛けるために、姿勢を傾ける。
「ココさーん、準備出来ましたよー」
呼びかけると、キッチンから続いているリビングから、はーい、という何とも気の抜けた返事がかえってきて、笑えてしまう。
彼がこんな声を出すようになって、いったいどのくらいがたっただろう?
気の抜けた。
そう、当たり前のように気を抜いていてくれるようになったことが、とても嬉しい。
「何を笑っているんだい?」
クスクスと声をもらして笑っていると、リビングの扉からひょい、と彼が顔を出してくる。
ラフな恰好の彼は、今日はターバンも巻いていない。
漆黒の髪がその動きにあわせて、さらりと宙に舞っている。
「なんでもないです」
「なんでもないようには見えなかったけど」
「本当に、なんでもないですって」
彼はその返答を不服そうにしていたが、あとできちんと聞かせてもらうから、と言って差し出したおぼんを手にとってくれる。
「今朝は洋食なんだね」
「はい。卵と空豆のスープに、カリカリに焼いたベーコンとソーセージ、それからレタスが安かったので千切ってサラダにしてあります。
パンはもうできあがりますから、あとでバターと一緒に持っていきますね」
「それは美味しそうだ」
楽しみにしているよ、と言って彼は二人分のおかずを持っていく。
パンを入れたオーブンが焼き上がりを告げるまで、あと1分。
その時間を待つ間が、たまらなくお腹が空いて、それでいてたまらなく、お腹がいっぱいになってしまうようだった。
幸福な食卓