月には雲。
雪には光。
風には、花。
美しい光景というものは、美しいものがつきものだ。
その景色を彩る相棒であり、引き立てる脇役であり、主役でもある。
それを眺めることが出来るのは幸福そのもの。
今、眼前に広がる景色を見ることが出来る。いつ、どこでそれが見ることが出来るのかなんて、あの凄腕の占い師でもない限りは無理なのだから。
「……わぁ…」
うっとりと、横の方で同じ景色を見つめている小さな料理人が感嘆の声をもらす。
おそらく、今、小松の心の中にある感情は自分が抱えているものと同じであるはず。
それが、なんともたまらなく嬉しい。
「綺麗ですね…」
「そだな」
心のままに呟かれたであろう言葉に同意する。
すると、その同意したということが嬉しかったのか、小松が振り返り、微笑みをこぼした。
目の前に広がるのは、満開の花。
数えるのさえ莫迦らしくなるくらいの、色とりどりの数多の花たち。
風で舞い上がる花片は、まるで吹雪。
花吹雪とはよく喩えたものだと思う。
言葉を思いついた過去の人間の美しい感性に、心の中で感謝した。
舞い上がる花片を指先でつまんで取る。
動体視力さえ養っていれば出来ない芸当ではない。
けれど、それを行った自分に小松は目をキラキラさせて凄いですね! と歓声を上げた。
その称賛が、なんともこそばゆい。
「松」
「はい?」
「つくしーな」
「そうですね」
本当に、綺麗です。
そう言って笑う。
同じものを見て、同じものを感じるということ。
言葉を告げれば返してくれるということ。
自分の感じたものに同意をしてくれるという、その僥倖が愛おしい。
花に嵐、と。