サイナ=ヴァンスの日記 ○月×△日(晴れ)
『今日、ものすごくいいことがありました!
ゲシュぺンストmkUが来たのは・・・もちろん。
それから、ジェスさんが来てくれたことです!』
「忍さん! 急いでこっちに合流してください!!」
「わかってる! だが、こっちも囲まれてるんだよっ!!」
「しっかりしなよ、忍! このままじゃこっちが落とされちまうんだからね!!」
バナマ運河上空。
其処は今まさに激戦地と化していた。
多くのモビルスーツやスーパーロボットが飛び交い、敵を撃沈、あるいは逆に攻撃を受けてしまっている。
ロンド・ベルが受けるはずの補給物を運ぶ部隊が敵の攻撃にさらされてからしばらくして・・・超獣機神ダンクーガを操る四人の面々は間に合ったが、部隊を守るのが精一杯であった・・・なんとかアーガマが到着した。
機体のスピードが速いマサキが操るサイバスターとサイナが操るゲシュペンストがダンクーガのもとへと急ぐが、いかんせん距離がありすぎる。
部隊は保護されたものの、ダンクーガは敵に囲まれ袋叩きにあっていた。
「・・・破損率・・・46%・・・!? だめ、このままじゃ落とされる!!」
モニターでダンクーガの破損率を計測し、その数値を見たサイナの顔に苦渋の色が浮かぶ。
・・・だが、このままではいけない!!!
「・・・いきますっ!!!!!」
「って、おい! サイ!!」
通信画面先で小さく呟いたサイナの言葉にマサキが驚く。
その横をゲシュペンストがもう一度バーストを拭かせ・・・敵陣の真っ直中へ突っ込んでいくのが別画面で見えた。
「おい、サイ!! 無茶だ、引き返せ!!!!!」
マサキの静止の声がサイナの耳に入る・・・だが、ここで止まってはダンクーガはもちろんのこと、自分の機も格好の攻撃目標にされてしまう。
サーベルを最大出力にすると、バーストの音に気づきふり返る敵・・・戦闘獣の集団のなかへと突っ込む。
「ええい!!!!!」
気合い一撃で相手を切り伏せ、そのなかをただひたすらに進んでいく。
だが相手もさるもので無防備なゲシュぺンストの背中に容赦ないミサイル攻撃を仕掛けてきた!
大きく機体が揺れ、サイナの右横にあるモニターがレッド・・・つまり危険事態であることを示している・・・に変わる。
「機体破損率・・・・・・まだ、いける!」
それでも突き進んでいくゲシュペントス。
無謀だと誰もが思った。
このままでは落とされてしまうのも時間の問題であろうと。
その時、ゲシュペンストに切り伏せられた機械獣の一匹が凄まじい爆音とともに爆発した。
その途端、ゲシュペンストの姿は閃光に、サイナを写していたモニターも砂嵐に変わる。
「サイ、サイ! おい、返事しろ!」
その光景を目の前で見ていたマサキが呼びかける。
「・・・サイさん!」
同じく後方でアーガマを敵の増援部隊から死守していたシンジも思わず振り返った。
その隙を狙われるが間一髪のところでレイが相手を切り伏せ、助けられる。
「・・・!! サイ、おい! 生きてたら返事しやがれ! おい!!」
そしてダンクーガのメインパイロットである忍も消えた画面先に呼びかける。
「・・・・・・合流、完了・・・」
だが一同の心配は杞憂に終わった。
回復した画面には衝撃で打ち付けたのかたんこぶのできた額があるサイナの顔が写り、
同じく煙のなかから破損は激しいものの機体の形をそのまま残したゲシュペンストの姿がある。
それを見た沙羅が、ほーっと溜め息をついた。
だがすぐにキッと目をつり上げるとモニター先のサイナを怒鳴りつけた。
「・・・なにやってんだよ! 死ぬ気かい、あんたは!!!」
その激しい剣幕にサイナがびくっと体を竦ませる。
しかし、すぐに沙羅の心境・・・ものすごく、心配してくれたこと・・・に気づいたのか、小さく笑った。
「いいえ。生きていくつもりです。」
「ならなんで・・・!」
「皆さんを助けたかったから。これって理由に、ならないですか?」
てへっと照れたように笑うサイナに脱力したのか、沙羅が呆れ果てた表情で溜め息をつく。
忍はサイナの返答が気に入ったのか、軽く笑うと。
「いいや。いいんじゃねえの? 立派な理由だと思うぜ。」
「ありがとうございます。それじゃあ、そろそろいかないと・・・道は、開けておきましたから。」
見ると先ほどゲシュぺンストが通った道・・・無理矢理に機械獣たちをなぎ倒した部分が、包囲網の穴になっている。
「・・・けっこう無理するんだね、サイって。」
ははは、と力無く笑う雅人。
・・・こうしてダンクーガとゲシュペンストは、敵の包囲網から脱出した。
「・・・まあ無事に帰ってこられたことはいいだろう・・・だが!
サイナ=ヴァンス! 君の行動は自爆行為に等しいぞ! もう少し先を考えて動け!」
そしてアーガマに機体が収容されたあと、サイナはブライトにこってりと搾られていた。
可哀相なほど怒鳴り声をあげられるたびに体をびくっと竦ませ、目に涙まで浮かべている様子は、はっきり言ってブライトを悪者にしてしまっている。
「・・・すみません・・・・・・」
「まあまあ、いいじゃねえか。あの自殺行為がなければ俺達の機体は木っ端みじんだったわけだし。」
そこにようやく機体を収容し終えた忍たちがやって来る。
ぽんっとサイナの肩を叩く忍。
「だが・・・・・・」
「それに、もし落とされたりしたら修理費も馬鹿にならなかっただろ? よかったじゃねえか、なあ?」
その話題にぐうのねもでないブライト。
・・・ロンド・ベルは毎度のことながら、資金不足だったりするのだ。
痛い腹をつかれたブライトであったが、最後に、
「・・・これからは、気をつけるんだぞ。」
と、言い残すとサイナを解放した。
さっさと行ってしまうブライトの後ろ姿に、緊張の糸が切れたのかサイナがはーっと溜め息をつく。
その様子がおかしかったのか、忍たちが声をあげて笑った。
すると沙羅が無言のままサイナの前に立つ。
「・・・ブライトの言う通りだよ。落とされたら修理費は馬鹿にならないけどさ、死んだら元も子もないんだからね!」
「・・・・・・はい・・・」
「・・・でも・・・一応、礼だけは言っておくわ、ありがと。」
沙羅の言葉にサイナが嬉しそうに笑った。
「はい・・・これからは、気をつけます。
でも、助けには行きますから・・・それは、いいですよね?」
「・・・当たり前だろ。仲間なんだからさ。」
・・・姉御肌、という言葉がしっくりくる沙羅。
サイナも超強気な沙羅は苦手なタイプだが、この気遣いに何となく居心地の良さを感じていた。
さてそんな和やかな雰囲気の時だ。
ふいに人々がざわつきはじめた。
「・・・? なんだ、何かあったのか?」
「と、いうより誰かが来たって感じ・・・・・・」
ダンクーガの面々がそう言っているのを聞きながらサイナはたんっと軽く床を蹴って走り出した。
そんなサイナの様子に沙羅が驚くが何となく気になってそのあとを追う。
忍達もそれに習った。
やがて収納庫までくるとかなりの数の人がいることに気づく・・・多分、このなかにいるんだろう。
人々の間をすり抜け、サイナが収納庫のなかへと進んでいく。
やがて巨大な・・・新しい機体の姿が目に入った。
・・・ゲシュペンストと、よく似ている。
思わずぼうっと見上げてしまうサイナ。
するとその姿に気づいた渦中の人物・・・その謎の機体をアーガマまで運んできた青年がサイナを見てアッと声を上げた。
その声に気づき、サイナも振り向く。
そして・・・・・・ロンド・ベルに入ってはじめて、極上の笑顔を浮かべた。
「ジェスさんっ!!!」
「サイナ!!」
嬉しそうに走り寄り・・・人より遅いのが難点だが・・・こともあろうにジェスに抱きついた。
嬉しさのあまりの行為だろうが、それを見たロンド・ベルの面々の表情が凍り付いた。
『・・・なんで姫がこいつに!!? と、いうよりこいつは姫のなんなのだ!!!!』
・・・なんとも正直な反応である(笑)。心情でもあったが。
だがそんな人々の思いなんてつゆ知らず、ジェスは抱きついてきたサイナの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「久しぶりだな! 最後に会ってからどれくらいだ・・・・?」
「半年ぶりぐらいです! お会いできてすっごくすっっごく嬉しいです!!」
にこーっと笑うサイナ。ここまで彼女が自分の感情を表に出すのは珍しい。
その様子にジェスもまた嬉しそうにわしゃわしゃとサイナの頭と頬を撫でる。
その光景は子犬と戯れる飼い主のようである(笑)。
「うにぃ〜・・・ほっぺたはやめてください〜」
「お。わりぃ。」
サイナが抗議の声を上げるとジェスはあっさりと手を解く。
はっきりと言おう! いいや、言わせてもらおう!!
彼らはラブラブだった、誰が見ても・・・そう、超鈍感娘と超奥手青年を除いては・・・・・・!!!
「だから、楽しいんだけどね。」
そんな二人の熱々ぶり(まてぃ)を見て、もう一人の青年がぽつりと呟く。
そう、今回来たのはジェスだけではなかった。
・・・嵐の予感、である。
<続く・・・>
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