これはほんの少し先の、ここから次元の違う未来の話。

誰にも紡がれることのない、小さな話。

ただ倉庫の片隅に残された<マグ>だけが知っている物語。


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新しい、家族

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 WARNING!
 WARNING!
 WARNING!
 WARNING!

 強制機能停止処分解除。長期コード短期コード、機能停止から回復。
 全メモリを照合・・・・・・OK!!!
 メインAI起動。すべてのプログラムを解放します。

 繰り返します。
 メインAIを起動。すべてのプログラムを解放。
 システムナンバー<C>・・・識別名称<ケルベロス>、起動開始します!




 その時、私は確かに『目覚めた』。
 ただその目覚めが何か重々しいものだった・・・『他』の比べて。

 ・・・? 他・・・?
 他とはいったい、どういうことを言うのだ・・・?

 私はいったい、誰だ?

「あ、ようやく目が覚めたみたいよ。このお寝坊さん。」

 声が聞こえた。
 くすっと笑いながら私を見つめているであろう、声。
 目を開けると・・・(この場合、アイカメラだが)・・・視界いっぱいに広がったのは、白い天井。白い明かり。
 そして、金髪の女性と、濃紺の髪の男性だった。

「・・・ここハ・・・?」
「メディカルセンターのベットの上だ。状況説明をしてほしいか?」
「やめなさいよ。機能停止から回復したばっかりなのよ? いくら彼だって混乱するわ。」

 アンドロイドなのに・・・と、私は思った。そう、私はアンドロイド。人に作られた・・・人の手によって作られた命。
 だから少々の記憶の混乱など・・・。

 あるはず、なかった。

「スみません。それよりお尋ねシたいコトがあるノデスが。」

 そう問いかけると、なぁに? と言った感じで女性がこちらに振り向く。
 二人は外見はあまり似ていなかった。

 女性のほうは背は小さめなうえに金髪。男性のほうは濃紺の髪で背は大きい、おまけに顔の下半分をマスク(らしきもの)で隠している。
 だが瞳の色が同じだった。
 そのため二人が血縁者であることが何となく察することができる。

「私ハ誰デスか?」

 そう聞いた瞬間。

 女性のほうが持っていたものを床に落とし、男性のほうは少しだけ目を丸くしていた。



「・・・記憶メモリの大部分が破損している恐れがあるそうだ・・・長期メモリも所々ぶち切れていて、とてもじゃないが外部からメモリを引き出すのも危険。」
「じゃあこのままにしておけってこと?」
「そうなるな。伝達部分は時間をかけて自己修復させるのが一番だと言われた。」

 
 私の名は『ケルベロス』。
 人によって作られた機械人間<アンドロイド>であり、ハンターという・・・どういう職業かは先ほど説明をしてもらったが、いまいち把握できないでいる・・・ヒューキャスト。
 
 どうやら私は廃棄処分寸前のスクラップ状態であったらしい。
 それを偶々、目の前の二人が・・・少女(?)のほうがルキ。青年のほうをグリフという・・・見つけて持ち帰ってきたという。
 そしてメディカルセンターで、私は再び機能を回復した・・・

 ・・・記憶が、そのAIが故障してしまい全てのメモリを無くしてしまったが・・・

 唯一思い出すことが・・・違う、知ったのだ。起動する直前に、内部メモリが私を『ケルベロス』と呼んでいたから。

「でも・・・じゃあ、どうしようか?」
「まさか面倒を見るなんて言うんじゃないだろうな?」
「あら、さすが私の弟v よくわかってるじゃないの〜v」

 えぃっと小声で言いながらルキ・・・待て、その目の前の男を『弟』と呼んでいたということは、姉にあたるのだろうか?・・・が、グリフの胸をつつく。

 彼は怒ったような、どちらかというと困ったような複雑な顔をしていた。

「姉さん・・・これ以上の厄介ごとには首をつっこまないでくれ・・・と言っても、聞いてくれないんだろう?」
「勿論。」

 にっこりと笑顔を浮かべて言い切るルキ。

 彼女は溜め息をついて頭を抱えているグリフから体の位置を私のほうに向けると、首を傾げながら聞いてきた。

「・・・と、いうわけなんだけど。いいかしら?」
「・・・・・・しかし、私ガいてハ・・・ご迷惑ガかかルノでは?」
「あー、そういうのいいっこなしなし! 第一、これから貴方、行く当てとかあるの? ないんでしょ?
 いくらハンターだからって右も左もわからないまま、一人で行きてく気?」

 反論は? と言った感じで顔を私の方に近づけるルキに、私はどうしようか迷った。
 一瞬、グリフのほうを見てみるが彼は肩を竦めるばかりだ。
 もう諦めている。好きにさせると言った・・・そんな、ところだろう。

「じゃあこうしましょうよ。」

 私が返答に窮していると、ルキはもう一度口を開く。

 その内容は、私も・・・そしてグリフも驚くものだった。

「貴方、私たちの弟になりなさい。家族なら扶養したって文句ないでしょ? うん、決まり!!」
「・・・・・な・・・! 姉さん!!」
「それハ・・・さすがニ、色々と問題ガあるノ・・・」
「あら、何の問題があるっていうの? いいじゃない、弟の一人や二人増えたって。」

 アンドロイドとヒューマンの姉弟・・・それは、色々と倫理的にまずいものがあるのではないか、と思った。
 あくまでも私の直感ではあったが。

「今じゃアンドロイドとの婚約とかだって認められてるのよ? いーじゃないの! それともなに? 私を止めれる自信、ある?」

 凄みのある笑顔に、私とグリフは押し黙ってしまう。

 ・・・この時、彼女のレベルはすでに私など追いつけるはずもないような域にあった・・・グリフも私よりハンターレベルは高い。
 だが、後から聞かされたことだがルキのガンとテクニックの複合業には敵わないらしい。


 ともかく(私が状況を把握する前に)、こうして私、ことケルベロスは、彼らと『姉弟』となった。
 この出会いが後々、私たちの運命を目まぐるしいものに変えていくのだが・・・



「決まりー! じゃあ、ケルベロス。これからよろしくね。私のことは、姉さんとかで呼んでいいわよ。」
「・・・まあ・・・仕方ない・・・俺の呼び方は好きにしてくれ。俺はお前のことはケルベロスと呼ぼう。」

「・・・・・・はイ・・・では・・・よろしく、オ願いシます。」

「・・・」
「・・・・・・」
「・・・姉上・・・兄上・・・」

「やだ。古風ね、ケルベロスったら。」


 それはまだ、先の話。


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